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飲酒運転の脳・体への影響

「飲んだら乗るな。乗るなら飲むな。」よく耳にする言葉です。たとえ少量のお酒でも心身に影響を与え、運転能力、判断力などが低下して取り返しのつかない事故を引き起こしています。
お酒を飲んで運転すると以下に挙げる影響が現れます。

  1. 動体視力が落ち、視野が狭くなります。そのため信号の変化や路上の人や車の動きの見極めが 遅れます。
  2. 抑制がとれ理性が失われているため、運転に必要な判断力が低下しています。スピードを出し ていても気づかなかったり、乱暴なハンドルさばきをしてしまいます。
  3. 集中力が鈍っているため、とっさの状況の変化に対応できなくなります。
  4. 運動をつかさどる神経が麻痺しているため、ハンドル操作やブレーキ動作が遅れがちになります。
  5. 体の平衡感覚が乱れ、直進運転できず、蛇行運転をしたりします。
    このため、信号無視、カーブを曲がりきれない、横断中の人の見落とし、ハンドル操作の誤り、ガードレールや電柱への衝突などをして、悲惨な事故を招いてしまうのです。

飲酒運転と交通事故

飲酒運転は法律(道路交通法)で禁止されているにもかかわらず、後を絶ちません。
道路交通法改正による厳罰化や社会的機運の高まりによって減少したものの、平成20年における飲酒運転を原因とする事故件数は6219件、うち死亡事故は305件に上っています(警察庁ホームページより)。

酔いの状態と運転事故発生の可能性

ほろ酔い期(血中アルコール濃度0.05%以上)で運転事故の可能性は2倍になります。

たとえば、アルコール1単位(ビールなら中びん1本、日本酒なら1合、焼酎なら0.6合)で事故の可能性は倍増しているのです。

だから飲酒運転は法律で禁じられているのです。

お酒の酔いはすぐには回らない

お酒の酔いはすぐには回らない

  • Qビールを1本飲んだが、全然酔っていないと思う。だから、運転しても大丈夫だ。
  • Aお酒を飲んでしばらく経つと、必ず酔いが回ってきます。絶対運転してはいけません。


お酒を飲んでも、すぐ酔うわけではありません。アルコールは、胃や小腸から吸収され、血液に入り、循環されて脳に到達します。それまでに数十分かかります(お酒と一緒に食べ物をとると、アルコールの吸収にさらに時間がかかります)。

そのため、お酒を飲んだ直後は酔った兆候が出ません。だからといって、酔ってはいないと勘違いしてはいけません。しばらく後に必ず、酔いが回ってきます。

お酒を飲んだときは、絶対運転してはいけません。

酔ったときの感覚は当てにできない

  • Qみんなで楽しくお酒を飲んだ。交通の不便な店だったので、車で来ていた。自分では意識はしっかりしているつもり。
  • Aお酒を飲むことが分かっているときは、車で出かけることはやめましょう。もしも車で出かけてお酒を飲んでしまったら、絶対に運転してはいけません。

つい飲酒運転してしまった、という理由の一つに、自分では意識が正常だと思いこんでいたということがあります。しかし、自分では正常のつもりでも、アルコールによって確実に判断力や運動能力が落ちています。また、飲酒を続けるうちに急性耐性といって、アルコールの作用に慣れが出てきてしまうことにも注意が必要です。

下のグラフは、点滴で血液中のアルコール濃度を一定に保ちながら、被験者に「酔いの症状」を主観的に判断してもらった実験によるものです。時間が経つにつれて、酔いの自覚症状が薄れていくことがわかります。

また、地方都市ではバスや電車では行きづらいところにお店がある場合があります。そのような場所の店に行って、飲酒をしてしまいそうなときは、車では出かけずに、タクシーなどを利用しましょう。どうしても車で出かけるときは、前もって代行運転などの手配をしてから出かけましょう。

血中アルコール濃度と酔いの感覚

血中アルコール濃度と酔いの感覚

アルコールの代謝には時間がかかる

  • Q前の晩に深酒をした。ちょっとフラフラするが、よく眠ったから大丈夫。朝起きてすぐに運転をした。
  • Aアルコールが体内で代謝するまでには、飲んだ量に比例して時間がかかります。眠ったからといって、アルコールが体内からなくなったわけではありません。

前の晩に深酒をし、翌朝酒気帯び運転をして事故を起こし、逮捕されたケースがあります。お酒を飲んだ後、酔いがさめるまでには、一定の時間がかかります。

体重約60kgの成人男性で、1単位(ビール中びん1本、日本酒1合、焼酎0.6合)のアルコールが体内から消えるまでに約3〜4時間かかります。2単位では、約6〜7時間、3単位では、約9〜10時間、4単位では、約12〜13時間かかります(これは、あくまで目安です。体格、体質、性別で異なります)。

例えば深夜までお酒を飲んでいて、3〜4単位のアルコールが体内に残っている場合、アルコールが身体から抜けるまでには約9〜13時間かかると考えられ、翌日の午前中はお酒が抜けていないことになります。飲酒した量だけ、代謝には時間がかかるのです。

アルコールは肝臓で約90%代謝され、残りの約10%は呼気や汗、尿として排出されますが、この割合は入浴や運動をしても変わりません。たくさん汗をかいたからといって、10%以上のアルコールが汗として排出されることはないため、アルコールの代謝は待つしかありません。

したがって、お酒を飲み過ぎた翌日は運転してはいけません。

アルコールの代謝には個人差がある

  • Q日本酒を1合飲んでから、3時間経った。もう、酔いはさめたと思うが、念のため自動車の運転はやめておこう。
  • Aお酒の酔いがさめる時間は個人差があります。お酒を飲んだ日は、運転してはいけません。

平均的な人(体重60kgの男性)では 、1単位(ビール中びん1本、日本酒1合、焼酎0.6合)のアルコールが体内から消えるまでに約3時間かかります。

下のグラフはお酒に強い中年男性がビール350mlを1本ないし2本飲んだ場合の、血中アルコール濃度の変化を示したものです。しかし、代謝時間には個人差があるため、何時間経過すれば必ずアルコールが抜ける、ということは一概にいえません。酔っている間は判断力が鈍っており、飲んでいる量を正確に覚えていないこともあります。

また、一般的に女性は男性よりも、この数値以上に代謝に時間がかかります。お酒を飲んだ日は、たとえ時間が経っても、運転を避けるべきです。

血中アルコール濃度の変化

血中アルコール濃度の変化

酒気帯び運転の基準値

  • Q警察の取り締まりが厳しくなっているが、ビール中びん1本くらい飲んでも大丈夫?
  • Aビール中びん1本で、「酒気帯び運転」になります。運転するときは、一杯のお酒も飲んではいけません。

道路交通法では呼気1リットル中0.15mg以上アルコールを検知した場合、「酒気帯び運転」としています。これは、どのくらい飲んだ場合でしょうか?

1単位(ビール中びん1本、日本酒1合、焼酎0.6合)のアルコールを飲んだときの血中アルコール濃度は、0.02〜0.04%です。これは、呼気1リットル当たりのアルコール量に換算すると、0.1〜0.2mgに相当します。つまり、1単位のお酒を飲んだだけで、「酒気帯び運転」の基準値を超えることになります。しかし、これらの数値は個人差が大きいこともあり、お酒を一杯でも飲んだら運転はやめましょう。

また、実際には血中アルコール濃度がこれ以下、0.015%(呼気1リットル中0.07mg)でも、いくつかのことに同時に注意を払うという脳の機能に影響があることがわかっています。これは、すなわち、自動車を運転するときに必要不可欠な、前方・後方の状況を同時に把握する能力が損なわれていることを意味します。「酒気帯び運転」の取り締まりは、医学的にみても、危険な状態とみなされるから行われているのです。

警察が取り締まっているからではなく、悲惨な事故を招かないためにも、絶対飲酒運転をしてはいけません。

違反行為の点数・処分内容等

  点数 処分内容 欠格・
停止期間

酒酔い運転

35点

免許取消

3年

酒気帯び運転

(呼気1リットル当たりのアルコール量)
0.25mg以上

25点

免許取消

2年

(呼気1リットル当たりのアルコール量)
0.15mg以上0.25mg未満

13点

免許停止

90日

(注)この処分は一例であり、過去の交通事故や交通違反の前歴等により異なる。
「欠格・停止期間」は、前歴なしの場合。

違反行為の点数・処分内容等

飲酒運転取り締まり基準

酒酔い運転

まっすぐ歩けないなど、酔った状態で運転すること。

酒気帯び運転

酒に酔った状態でなくても、一定基準以上のアルコールを体内に保有して運転すること。

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